● 最終回 アントキのデキゴト

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白い革製品のポシェットを提げていることがわかったのもここまで近くに来たときだった。
しかし、絵的にはよく見えたものの、その異様なムードはなんて表現すればいいのかまったくわからない。抱いている布に包まれたコドモもあくまでコドモ状のものにしか見えない。
布からはみ出ている頭部はもの凄い量と長さの黒々とした毛髪状のものだった。
歩く歩幅を小刻みに、かつゆっくりとしつつ、なるべくその後の経過を見守ろうとするも、目標地点は過ぎたので、少しずつ遠く離れざるを得ない。
時々振り返って確かめていたら、ある時からフッと何か(もはや「何か」としか書けない!)を抱いていた男がいない。でも、女性の方は相変わらず同じ方向を向いたまま立っている。
しかし、幽霊のように消えたのではなく、よく見れば男は家の中へ続く階段の方に向かっていた。それがかろうじて見えた。でも、手ぶらだったのである。
立ったままの女性も最初に見たときと同じように立っている。そして、男が見えなくなった
頃合で、同じ階段の方へ向かっていった。そして、最後にチラッとコッチの方を見たのである。
文字にして書くと、これ以上のことは何もなく、今、冷静になってみれば人に話せるほど出来の良い怪談でもなんでもないかもしれない。でも、あのリアルタイムで感じた恐怖といったらなかった。怖いのかどうかわからないものだから、怖くなるまで凝視してしまう感じ? 実は深層心理では「怖い」結論を求めていたかのような自分のそのときの反応にも驚かされる。
ところで、あそこの新築建売の一角って、人はもう住んでいるんだったろうか? まだ、売り出し中の旗も飾ってあったような気もする。ところどころ住み始めてはいたのは知っているのだが。果たしてあの、階段の家はどっちなのだろう?
カテゴリーlime

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